ベトナムの歴史あるソンベ焼きから生まれた金継ぎアクセサリー

ホーチミンで生まれた、唯一無二の金継ぎアクセサリー。その魅力的なストーリーを覗いてみませんか。 職人の手仕事で丁寧に仕立てられたこのアクセサリーは、廃棄されるはずだったソンべ焼きに新たな命を吹き込み、ベトナム南部に息づく陶器文化と「修復の美学」を未来へとつなぎます。

日常を彩ってきた、ベトナム南部の庶民の器「ソンべ焼き」

ホーチミンから北に約15km。ベトナム南部・ビンズン省で生まれた「ソンべ焼き」は、素朴で温かみのある風合いと手仕事による自由な絵付けが魅力の陶器です。そのルーツは17世紀の中国移民に遡り、のちにフランスの影響を受けながら、南部の風土に根差した独自の文化を育んできました。

ソンべ焼きは、家庭の食卓を彩る日常使いの器として親しまれ、軽やかなつくりと華やかな模様で人々の暮らしを支えてきました。お皿に絵描かれた鶏や金魚、花模様は、中国の吉祥柄やフランス由来の意匠など、さまざまな文化が融合した豊かな表現で、薄くて軽く、大皿が多いのも南部の大家族文化を反映しています。

しかし、時代の変化や戦争、職人不足などの影響で1980年代以降、窯元は激減。薪を使った登り窯で焼かれる伝統的なソンべ焼きを見る機会はほとんどなくなりました。

廃棄される陶器に新たな命を。「金継ぎ」がつなぐ物語

美しいソンべ焼きのうち、約15〜20%はわずかなひびや欠け、色ムラなどのために商品として販売されず、廃棄されてしまう運命にあります。けれど、そこには職人の技と文化が詰まった、美しくも儚い存在が確かにあります。

私たち ít ít Việt Nam (イットイットベトナム) は、この「まだ美しいのに使われない器たち」に再び光を当てたいと考えました。ホーチミン市内の陶芸ブランド「Nang Ceramics (ナン セラミック)」を訪ね、廃棄予定のソンべ焼きを1点1点丁寧に選び出し、日本の伝統技法「金継ぎ」から着想を得た独自の手法でアクセサリーへと生まれ変わらせています。

さらに、私たちはこの販売できない陶器をNang Ceramicsから正規に買い取っています。
つまり、このアクセサリーをご購入いただくことで、その売上の一部は窯元の修繕費や職人さんへの報酬として直接還元されます。
モノを大切にするだけでなく、その背景にある技術や人々の営みも支える、そんな循環を生み出したいと考えています。

上品な煌めきを日常に。技術とデザインへのこだわり

本来の金継ぎは、漆と純金を用いた繊細な技法ですが、アレルギーやお手入れの難しさがあるため、私たちは金粉と樹脂を使用してアクセサリー向けにアレンジしました。金の色味には特にこだわり、安っぽさを感じさせない上品で温かみのある光沢を表現しています。

さらに、ベトナムのダナン・ニャチャン・フーコック島で養殖が盛んな淡水パールと組み合わせることで、華やかで洗練されたデザインに。南国の豊かさと日本の美意識が溶け合う、世界にひとつだけの特別なアクセサリーが生まれました。

割ることで生まれる、唯一無二のかたち

ソンべ焼きの器は、私たち自身の手で一枚ずつ割っていきます。思い切りのいる作業ですが、割れ方のコントロールができないからこそ、ひとつとして同じ形がない「一期一会の造形美」が生まれます。「このかたちはイヤリングに」「これはネックレスに」——そんな風に想像を膨らませながら、デザインを考える時間もまた創造の一部です。

ソンべ焼きと、デザイナーのストーリー

この商品が生まれたのは、ある小さな螺旋階段をのぼった先にあった、Nang Ceramicsの旧店舗との出逢いからでした。並んでいたソンべ焼きの中に、ベトナム文化とフランス文化、中国の伝統が溶け合ったような柄の皿があり、その美しさに一瞬で心を奪われたのを今でも覚えています。

実は…デザイナーの私自身も中国・上海で暮らし、フランス人の夫と共にベトナムに暮らしています。この器の背景に、まるで自分の人生が重なったように感じたのを今でも覚えています。

Nang CeramicsのHuynhさんが、若くして廃れかけたソンべ焼きの技術を守り、再生に取り組んでいるからこそ、私たちのアクセサリーも存在できていると感じています。

軽やかに、文化を持ち帰る

陶器は重く、割れやすい—そんな理由で旅先ではなかなか購入が難しいこともあります。けれどこのアクセサリーなら、軽やかに身につけられ、簡単に持ち帰ることができます。

一度も使われることはなかったけれど、本来は誰かの暮らしを彩るはずだった器たち。忘れられてしまう代わりに、今こうして新たな命を得て、物語や記憶、そしてほんの少しの美しさをあなたの日常へ届けてくれます。

ベトナムの伝統と美意識を、未来へつなぐ

このアクセサリーは、単なるリメイク商品ではありません。そこには、過去から続く文化を見つめ直し、今の暮らしに合う形で再提案する—そんな私たちの小さな挑戦と願いが込められています。

ホーチミンを旅したあの記憶が、身に着けるたびに蘇るように。
ひとつひとつ異なるかたちが、誰かの人生と重なり、そっと寄り添うように。

Wear a story.
Carry beauty reborn.

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